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Category: 誅仙小説  

第2章 混迷


第2章のあらすじ
青雲門のふもとにある草廟村(そうびょうそん)という村で喧嘩をしている二人の少年、"瞬星"と"倉皇"、二人の喧嘩を止めに入った老僧。
三人の出会いからすでに運命の歯車は廻り始めた・・・
嵐の夜、吹き荒れる風と鳴り響く雷雨の中、邪悪な気を放つ黒気に連れ去られる倉皇。
倉皇を救うべく立ち向かった老僧の正体とは・・・



第2章 混迷

 老僧は瞬星(しゅんせい)の問いには答えず、ふたりの少年を上から下までじっくりと眺め回し、とりわけ倉皇(そうこう)をよく観察して、心中でつぶやいた。
(よい天分をもっておる。だが、こうも気性が激しいとは)
 瞬星が一歩踏み出して訊ねた。「ねえ、お坊さんは誰? 見かけない顔だね」
 草廟村(そうびょうそん)は青雲門(せいうんもん)に近く、この一帯では道教(どうきょう)が尊ばれて、僧侶はめったに見られなかったのだ。
 老僧は少年に目をやって口の端に微笑を浮かべ、問い返した。
「そなた、さっきは危なかったな。降参すればよいものを、なにゆえ意地を張ったのだ? わしが手を出さなんだら、無駄死にしておったところじゃぞ」
 瞬星はあっけに取られた。言われてみれば一理あるが、なぜかと問われても自分ではうまく説明できない。
倉皇が老僧をにらみつけ、彼の手を引いた。「瞬星、この坊さん変だ、ほっとこう」
 そのまま表に連れ出すと、いつもそうしているらしく、他の子供らも皆おとなしく後につづく。
 瞬星は無意識に足を速めたが、廟を離れてしばらくしてから、ついつい後ろをふり返った。暮れゆく空の下、老僧はまだ同じ場所に立っていたが、顔はもう判然としなかった。

 深夜。
 雷鳴がとどろき、風がちぎれ雲を吹き流して、空の果てには黒雲がうずまく。
 嵐が近づき、あたりは殺気に満ちていた。
 老僧は廟の床で坐禅を組んでいた。目を上げれば、青雲山はおぼろに霞み、あたりは人の気配もなく、ただ一面に風が鳴り雷がはためくばかりだ。
 なんという嵐だろう!
 稲妻が空を切り裂き、嵐の中にうずくまる小さな廟を照らし出した。老僧はいまや戸口に立ち、厳粛な面持ちで眉をひそめ、空に目をやっている。
 村の方角にいつしか一筋の黒気が湧き起こり、墨のようにゆらめいていた。老僧はその黒気から目を離さない。
 すると黒気はとぐろを巻いて立ち昇り、廟をめがけて一直線に奔った。猛烈な速さだが、老僧のすばやい目はその中に少年の姿を見てとった。昼に出会った倉皇だ。
 老僧の顔がけわしくなる。と、痩せ枯れた体がふいに高々と飛び上がり、黒気の中に突っこんだ。
「おっ?」黒気の中のどこからともなく、怪訝そうな声が上がる。
 陰にこもった音が幾度かしてから、黒気はハタと進みを止めて、廟の上空にわだかまった。老僧は少年を小脇に抱え、ゆるゆると降下する。袈裟の背は大きく引き裂かれていた。
 かすかな光のもと、倉皇は瞼をかたく閉じていて、眠っているようにも気を失っているようにも見える。
 老僧は少年を抱えたまま、黒気を見上げて呼ばわった。「法術の達人が子供に手を出すとは、貴殿の体面にかかわりませんかな」
「何奴だ? 邪魔立てしおって」黒気の中からしわがれた声が返ってくる。
 老僧はそれには答えず、「ここは青雲山のお膝元、勝手放題をはたらいたと知れれば、貴殿も無事ではおられますまい」
声はあざけるように吐き捨てた。「青雲門など烏合の衆にすぎぬわ。つべこべ言わずにその子をよこせ」
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)、出家としては、この子がむざむざ毒牙にかかるのを見過ごすことはできぬ」
「くそ坊主、死にたいか」
 怒声とともに、渦巻く黒気のさなかで深紅の光が一閃し、たちまち廟は不気味な風と怪しい空気に包まれた。
「毒血幡(どくけつはん)!」老僧の面に怒気がみなぎる。「罰当たりめ、よりによってこの人倫にもとる邪法を修煉(しゅうれん)するとは、断じて許さぬ!」
 声はせせら笑って答えない。一声の叫喚とともに深紅の光が強まって、なまぐさい風が吹き、二丈ばかりの赤い幡(のぼり)がゆっくりと立ち上がった。無数の亡魂が泣きむせぶかのような叫喚に、骸骨の立てる響きが入り交じり、聞く者をぞっとさせる。
「坊主、死ぬがいい!」
 大喝とともに幡の表面に怪物の顔が浮かび上がった。三本の角と四つの目をもち、とがった牙をむいている。カラカラと骸骨が鳴りひびく中、四つの目がいちどきに見開かれるや、ゴオッと吼えて実体と化し、幡から躍り出ると、強烈な血臭をたなびかせて老僧に襲いかかった。
 老僧は怒りの色を濃くした。毒血幡の威力の強さは、修煉の犠牲とした命の数に比例する。これだけの威勢を得るまでには、おそらく三百人以上の血を要したはずだ。
 この妖人はじつに良心のかけらもない悪党なのだ!
 怪物が目の前に迫っても、老僧は小脇に倉皇を抱えたまま、碧玉(へきぎょく)の数珠をもつ左手で体の前に円をえがき、仏門の獅子印を結んだ。五本の指先からかすかな金の光がさし、たちまち金色の法輪(ほうりん)があらわれて、まばゆく光りながら中空で怪物と向き合う。
「これしきの技で......」言い終えぬうち、老僧の体がぐらりと揺れた。少年を抱える右手に何かが食らいついたのだ。たちまちむず痒い感覚が半身に走り、目の前が暗くなって、法輪も即座にぐらつき始める。
 それと同時に、怪物にも変化があらわれた。左右二対の目のあいだに、ぷつりと音を立てて巨大な赤い目がもうひとつ開いたのだ。なまぐさい風が巻き起こり、身の毛もよだつ咆哮とともに血の色をした光がひらめいて、勢いづいた怪物は法輪を粉砕し、老僧のみぞおちに痛打をくらわせた。
 老僧は後ろ向きに吹っ飛んだ。肋骨をすべて打ち折られたらしく、かすかな呻き声を漏らし、抱えていた少年も取り落としてしまう。一瞬後、痩せた体は廟の壁に叩きつけられた。ドォンと大音響を発し、壁全体が土埃をあげて崩れ落ちる。
「ハハハ......」黒気の中から勝ち誇った高笑いが響いた。
 老僧はよろめきながら立ち上がった。口から大量の血を吐き出し、衣の前が朱に染まる。視界はくらみ、全身が激痛に襲われ、例のむず痒さは心臓に迫りつつあった。
 なんとか気を取りなおし、地面に投げ出された倉皇に横目をくれると、その襟元からゆっくりと色あざやかなムカデが這い出してきた。手のひらほどの大きさで、尾は七つに枝分かれし、それぞれ異なる色をもつ。
「七尾蜈蚣(しちびごしょう)か!」老僧はうめくように言った。
 その顔はどす黒さを増し、口の端からは血が流れやまず、すでに限界に達しながら、なお意志の力で踏みとどまっている。
「この子に毒虫を忍ばせたうえ、実力を隠して不意打ちをしかけるとは、初めからわしが狙いであったか」
「いかにも、普智(ふち)よ、こうでもせねば、天音寺で修行した貴様をうかつに敵には回せぬからな。さあ、早く残血の玉を渡すのだ。そうすれば解毒の薬をくれてやる」
「仮にも〈智〉を名のる身でうかつだったわい。毒血幡を煉成するような輩が、残血の玉に目をつけぬはずがないものを」
苦笑してから、普智は面をあらためて言い切った。「この凶悪無比な代物を、きさまなどに渡すと思うか」
「ならば仏のもとに行くがいい」赤い光芒が一閃し、毒血幡が風を受けてはためくと、またしても巨大な怪物があらわれ、空中をひと巡りしてから普智に襲いかかった。
 普智は大喝を放った。衣が風をはらんだように膨れあがり、痩せた体を大きくみせる。左手に力をこめると、数珠の糸がぷつりと切れたが、十数個の碧玉はくるくると回転し、澄んだ光を放ちながら目の前に浮かぶ。ただひとつ、例の紫色の珠だけがぽとりと落ちた。
 普智は手のひらを返してそれを握りこむと、両手で左右水瓶(さゆうすいびょう)の印を結び、カッと眼を見開いて、全身から金の光を発しつつ、一字ずつ区切って唱えた。
「オン、マ、ニ、パド、メ、フン!」
「六字大明呪(りくじだいみょうしゅ)か」黒気の声が重々しくなる。
「フン」の一字が発せられたとたん、碧玉がいっせいに強い光を放った。同時に怪物が目の前に迫り、血の臭いが面をうつ。が、珠の発する光に触れると、それより先には進めない。両者は空中で対峙した。
 普智の体がふたたび揺らいだ。七尾蜈蚣は天下の毒物、数百年の修行をもっても克服できるものではない。だが、黒く染まったその面は、うっすらと笑みをたたえ、凛然としてさえ見えた。
「タアッ!」
 大喝が獅子吼のように野を揺るがし、碧玉は法力によってますます強く輝いた。珠のひとつがパリンと砕け、「仏」の文字を形づくって、怪物の顔面に打ちかかる。
「グアアアッ!」
 怪物はたちまち絶叫をあげて引き下がり、身をつつむ光芒も弱まった。手傷を負ったにちがいない。
「おのれ!」
 声は怒ったが、時すでに遅し。七、八個の珠がみるみるうちに仏教の真言と化して怪物に叩きつけられた。怪物はしきりに咆哮し、おびえた様子で後ずさったが、九つめが打ち当てられたとき、ついに長い絶叫を発し、どさりと地面に倒れ伏して、幾度かもがいてから動かなくなり、徐々に溶けて悪臭を放つ血溜まりと化した。
 同時に、普智もガッと大量の血を吐く。血の色はすでに黒変していた。
「ああっ!」
 闘いまさにたけなわという時、廟の戸口で甲高い悲鳴が上がった。
 両者はともにぎくりとする。黒気はざわつき、普智も戸口に目をやった。昼に出会った少年・瞬星が、いつの間にやって来たのか、目を丸くし口をぽかんと開けてこの奇怪な光景を見守っている。
 黒気の中にいる者がとりたてて指図した様子もないのに、ムカデはいきなり尾を振り立てて跳躍し、瞬星に飛びかかった。
 普智が眉を逆立てて右手の指を突き出すと、碧玉のひとつが勢いよく後を追った。ムカデは知能があるかのようにその矛先をかわし、尾をひと振りして黒気に逃げこむ。
「ふふん、さすがは天音寺(てんおんじ)四大神僧、深手を負ってなおわが毒血屍王(どくけつしおう)を破るか。だが、その体であとどれだけ持ちこたえられるかな? おとなしく残血の玉を差し出したほうが身のためだぞ」
 普智はいまや目尻からも黒い血を流していたが、なおも声をふり絞って笑った。「わが命がここで果てようとも、きさまを始末せずにはおかぬ」
 その声と同時に、残りの碧玉すべてが輝きはじめた。敵が注意を向けたとたん、青い光を放つ物体が背後から黒気に突っこんでくる。先刻、普智がムカデを追わせた珠が、ひそかに背後に回りこみ、相手の不意をついたのだ。
 黒気の中で怒号があがり、ビシッ、ビシッと音がして、青い閃光が放たれると、黒気は乱れて散りぢりになり、ついには消え失せた。ゆるゆると宙から降りてきたのは、痩せた長身の男だ。全身くまなく黒衣に包まれ、顔立ちや年のころは定かでないが、一対の眼を剣呑に光らせ、背には長剣を負っている。
「それほどの腕前を持ちながら、人に顔向けできぬのか?」普智が低い声で問う。
「坊主、地獄へ送ってやる!」
 黒衣の男はそうすごむと、背中の剣をシャッと抜き放った。刃は水のように澄みわたり、うすく青光りしている。
「みごとな剣だ!」普智は思わず賛嘆した。
 男は鼻で笑うと、剣訣(※人差し指と中指をそろえて立てる型)を結び北斗の型を踏み、剣を高々と天にかざして唱えた。
「九天(きゅうてん)を切り裂く神雷(しんらい)と化し、煌々(こうこう)たる天威(てんい)をわが剣に下さん!」
 たちまち地平線に黒雲が湧き、ごろごろと雷が鳴り響いて、雲のふちでは稲妻が光る。あたりは殺気に満ち、突風が吹き荒れる。
「神剣御雷真訣(しんけんぎょらいしんけつ)!」
 普智の面は瞬時に色を失い、ついで驚きと疑念、かすかな絶望、そして名状しがたい熱情に彩られた。
「青雲門の門人か!」



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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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