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Category: 誅仙小説  

第4章 急変


第4章のあらすじ

普智(ふち)と黒衣の男との戦いは終結し、死の間際の普智から口伝と珠を授かった瞬星(しゅんせい)。
気を失っていた、瞬星と倉皇(そうこう)の二人が目を覚ました先に待っていた現実はとてもひどく悲しいものだった。
再び気を失った二人が目覚めたのは青雲門本山、『青雲山(せいうんざん)の通天峰(つうてんほう)』だった...
二人が待ち受ける青雲門での運命はいかに。



第4章 急変

明け方になって雨はようやく上がった。

樹々に宿った水滴はきらきらと輝き、木の葉を伝って滑り落ちると、風に吹かれて美しい放物線を描きながら、瞬星(しゅんせい)の顔を打った。

冷たい感触に夢からさめ、目を開いた瞬星は、思わず

「師父(しふ)......」

と声を上げたが、あたりに人の影はなく、かたわらで倉皇(そうこう)が寝入っているばかりだ。

何もかもが夢だったように思えた。

だが、崩れ落ちた廟(びょう)と眠る友の姿が、すべては現実なのだと告げている。

彼はひとしきり思案してから、頭をぶるっと振って、倉皇の体をこづいた。

少年は何やらむにゃむにゃと呟いてからゆっくりと目を覚まし、口を開くより早く、悪寒に襲われて身ぶるいした。

自分と瞬星がびしょ濡れの格好で松の樹の根元にいるのに気づき、彼はあっけに取られて訊いた。

「うちで寝ていたはずなのに、何でこんなところにいるんだろう?」

瞬星は肩をすくめる。

「さあな。すっかり冷えちゃった、何でもいいから早く帰ろう」

脳裡は疑問でいっぱいだが、体はたしかに冷え切っていたので、倉皇はうなずいて這い起き、二人して村へと駆け戻った。

村につく前から、何かがおかしいことに気づいた。

いつもなら皆もう起き出している時刻なのに、あたりはしんとして人影もなく、しかも朝の風に乗って、かすかに血の臭いが漂ってくる。

ふたりは目を見交わし、同時に足を速めた。

まもなく村の入口に着き、大通り沿いに目をやると、四十数戸・二百人あまりの村民は、老いも若きも男も女も、残らず広場に倒れ伏し、冷たい骸となり果てているではないか。

流れ出た血は川をなし、蝿が群がり飛び交って、立ちのぼる臭気が鼻をつく。

この怖ろしい光景に、少年ふたりは魂を飛ばし、悲鳴をあげて気を失った。

どれほどの時間が過ぎたか、瞬星は意識を取り戻し、がばと身を起こして大きくあえいだ。

両手はかすかにわなないている。

失神している間に見たものは、怪物や鮮血に白骨といった悪夢の連続だった。

気を落ちつけて見回すと、そこはありふれた脇部屋で、小さな窓が二枚、松の木でできた机と椅子、水差しと湯呑みがあるばかりだ。

部屋の半ば以上を占めているのは、暖房を兼ねた巨大な作りつけの寝台で、上には四人分の寝具が載っている。

隣の布団はやや乱れていて、誰かが寝たあとらしかったが、残るふたつはきちんと畳んであった。

寝台の真上にある壁には、一幅の書が掛かっている。

大書してあるのは「道」の一字だ。

旅籠の大部屋のようでもあり、徒弟(とてい)たちが住みこむ宿舎のようでもある。

しばらく坐っているうち、ふと考えが浮かんだ。

(ゆうべのことは悪い夢だったのかもしれない。本当はずっとここで寝ていたのかも。ここを出たら、母さんがいつもみたいに「このねぼすけ!」って笑いながら叱るんだ)

のろのろと寝台を下りて靴を履き、戸口に向けて歩き出した。

扉は閉じているが、かんぬきはかかっていない。

かすかな隙間風がひやりとした空気を運んでくる。

ゆっくり足を進めながら、彼は小さな手をかたくかたく握りしめた。

心臓は早鐘をうち、息がつまる。

すぐに戸口に着き、扉に手をかけた。

その瞬間、木の扉はまるで鉄のようにずしりと重くなった。

歯を喰いしばり、腹をくくって、ギイッと扉を引き開けた。

表の明るい光が射しこみ、まぶしさに目を細めた。

おだやかな陽射しがぬくもりを伝える。

だが、心は真っ逆さまに氷の穴に落ち込んだ。

そこは狭い中庭で、松と柏に草木の植え込みがいくつかあり、清々しい香りの小さな花がところどころに咲いている。

扉の向こうは回廊で、庭の外へと伸びていた。

戸口から四尺のところに短い階段があり、庭と回廊に続いている。

その階段の片隅に、子供が一人ぽつねんと坐りこみ、頬杖をついてぼんやりとしていた。

扉の開く音に驚いたのか、その子は少しためらってから、ゆっくりこちらをふり向いた。

倉皇だ。

瞬星は口を開いた。

訊きたいことは山ほどあるのに、言葉は喉元で消えてしまう。

大声でわめきたかったが、胸は重くふさがれて、わめき声も出てこない。

ただ二すじの涙だけが、無言のうちに流れ出た。

そして二人の少年は、無言のうちに見つめあった。

どこからともなく軽やかな鳥のさえずりが聞こえ、青々とした空に白い雲が浮かぶ。

瞬星は階段の反対側に腰を下ろし、うつむいて石畳の小道を見つめた。

中庭はしんと静まり返っている。

どれほどの間そうしていたろうか、倉皇が重い口を開いた。

「おまえより早く目がさめたんだ。

その時はほかにも人がいた。

その人たちに聞いたけど、ここは青雲山(せいうんざん)の通天峰(つうてんほう)だって」

「青雲山......」

「青雲門のお弟子さんたちが通りかかって、見たんだって、村の......」

そこまで言いかけて、倉皇は声を詰まらせ、ごしごしと目をこすってから、一呼吸して続けた。

「それから、村の裏手でおれたちを見つけて、山に連れて来たんだそうだ」

瞬星は口元を引きつらせ、うつむいたまま訊ねた。

「倉皇、これからどうしよう?」

「わからない」

倉皇は首をふって凄然(せいぜん)と答える。

瞬星が続けかけたとき、後ろの回廊から聞きなれない声がした。

「やあ、二人とも起きたのかい」

ふり返ると、若い道士(どうし)が立っている。

青い道袍(どうほう ※道士が着る長衣)を着て、きりりとした風情だ。

道士は足早に近づいてきて言った。

「ちょうどいい、お師匠様方がおまえたちに訊きたいことがあるそうだ。ついておいで」

瞬星と倉皇は目を見交わして立ち上がった。

「では、案内をお願いします」

と倉皇がいう。

道士は彼をちらりと見て、うなずいた。

「こちらだ」

道士の後について中庭を出ると、そこはさらに長大な環状の回廊で、左右には二丈ごとに赤い柱が並んでいた。

柱の間にはくぐり門が設けてある。

回廊を進むうち、その門のひとつひとつが、先ほどと同じような中庭に通じていることに気づいた。

ここは青雲門の弟子たちが暮らす場所らしい。

中庭の数はおそらく百を超えると思われ、これだけをとって見ても門人の多さが想像できる。

長いこと歩いて、やっと回廊の端に着いた。

そこには白い塀が高々とそびえ、高さ数丈もある厚い木の扉がついていた。

これほど大きな材木をどこから探してきたのか不思議なほどだ。

だが、道士にとっては日ごろ見慣れたものにすぎないのだろう、驚嘆の色を浮かべる少年たちを後目に、顔色ひとつ変えず平然と歩み出ていく。

二人はあわてて後を追った。

扉から一歩踏み出したとたん、二人は同時に息を呑んだ。

目の前の光景が信じられなかったのだ。

そこはまるで伝説の仙境だった。

一面の広場に敷きつめられた白い宝玉がまぶしく光り、その前ではわが身が卑小な存在に感じられる。

かなたには白雲が薄絹のようにたなびき、足元を漂い流れている。

広場の中央には数十丈おきに銅の大きな鼎(かなえ)が九つ、三列に分かれて整然と並び、淡い煙を立ち昇らせる。

「こちらだよ」

道士は二人の気持ちを察したように、存分に眺めさせてやってから、おもむろに声をかけて先へとうながした。

「ここは青雲六景(せいうんろっけい)のひとつ〈雲海(うんかい)〉だ。

この先にはもっと見どころがあるぞ」

「何ですか?」

倉皇が急きこんで問う。

道士はゆくてを指さした。

「〈虹橋(こうきょう)〉だ」

遠くに目をこらすと、広場のかなた、ぼんやりとした雲の向こうに、きらきらと輝くものが見える。

彼らは足を速めて先に進んだ。

そのうちに、水の流れる音に混じって、何やら雷のような不気味な物音がどこからともなく聞こえてくる。

やさしい仙女にも似た雲が、彼らの周りをとり囲み、薄布の幕をはがすように、歩みにつれて徐々に姿を明かしていく。

広場の突き当たりからは飾りのない石橋が高々と伸び、天翔ける龍さながらに、先端を雲間に没している。

かすかな水音が響き、陽光は橋を七色に照り輝かせて、まるで虹のような華麗さだった。

瞬星と倉皇は目をみはり口をあんぐり開けてこの光景に見とれた。

道士は笑って

「おいで」

と声をかけ、石橋に足をかける。

橋に上ってみて気づいたのだが、橋の左右には澄んだ水がたえず流れ落ち、真ん中の部分だけが乾いている。

雲間を透かしてきた陽光が、水の流れに反射して、虹色の光を放っているのだ。

少年たちがうっとりしているのを見て、道士はいった。

「気をつけなさい。橋の下は底なしの奈落だ。うっかり落ちたら命がないぞ」

二人はぎょっとして気をひきしめ、慎重に歩を進めた。

虹橋は高く長く、進むほどに白雲が足元に沈んでいく。

例の不気味な物音はまだ続いていた。

しばらく行くと、雲はしだいに薄くなり、雲海を出たところで、視界が急に明るく開け、洗いたてのように澄み切った青空があらわれた。

四方は見渡すかぎりの空、足元は茫々たる雲海、見たとたんに心が晴ればれとする。

そして正面にあるのはまさに通天峰の頂上、青雲観(せいうんかん)の本殿〈玉清殿(ぎょくせいでん)〉だ。

緑なす山のいただきで、玉清殿の雄大な建物を雲が取り巻き、ときおり数羽の鶴が鳴きながら飛びめぐるさまは、仙人の世界さながらで、おのずと敬意を引き起こす。

虹橋はここから下り坂となり、空中で弧を描いて、玉清殿の前にある池のほとりに達していた。

着くと同時に屋内から道家の朗誦が漏れ聞こえてきて、仙界らしい風情をいや増す。

例の物音はいっそう強くなってきた。

橋を下りて池のほとりに来ると、幅の広い石段が、そこからまっすぐ大門まで続いている。

池の水は鏡のように平滑で、山の姿も人影もくっきりと映し出していた。

大門に向かって石段を上りかけたとき、池の底から雷に似た咆哮がとどろき渡った。

例の不気味な物音はこれだったのだ。

見ると、池の中心に突如として大きな渦があらわれ、たちまち逆巻く波とともに巨大な影が躍り出て、一面の水飛沫が真っ向から降りかかった。

道士はこれを予期していたらしく、ひらりと飛び上がって二丈ばかりも後退し、そのまま宙に浮いている。

一方、少年ふたりは逃げようもなく、たちまち全身ずぶ濡れになった。

だが二人は気にもかけず、目の前にあらわれた巨大な生き物に釘づけだ。

背の高さは五丈を超え、龍の頭に獅子の胴体、全身うろこに覆われて、大きな口には二本の鋭い牙がぎらぎらと光り、獰猛(どうもう)な顔つきは見るだに怖ろしい。

怪物はぶるっと身震いしてふたたび水滴をまき散らすと、ふと何かに気づいた様子で、巨大な頭を石段に向けて差し伸べた。

自分たちの体よりも大きな頭が、するどい歯並みをぎらつかせて迫ってくるのを見て、二人はすっかり恐れをなし、思わずぴたりと身を寄せ合って、心臓がどくどく早鐘を打つ。

そのとき、いつの間にか舞い戻ってきた道士が、片手のひらを胸の前に立てて一礼し、うやうやしく語りかけた。

「霊尊、このふたりは師匠方がお呼びになったものたちです」

怪物はじろりと道士を見やって鼻を鳴らし、大きな目玉をぐるりと動かした。

人が思案する時そっくりのしぐさだ。

それきり三人には取り合わず、ぶらぶらと水辺まで歩いていって、乾いた地面に横になり、あくびをひとつしてから気だるげに頭を落とし、太陽のもとで寝入ってしまった。

動悸のおさまらぬ二人に向かい、道士は先を行くよう手振りでうながした。

「あれは千年前に青葉祖師が手なづけた上古の霊獣で、水麒麟(すいきりん)というのだよ。そのかみ祖師が青雲門の名を揚げ、妖魔を退治するにあたり、大いに力を貸したのだ。今はわれら青雲門の守護聖獣で、〈霊尊〉の呼び名で敬われている」

言い終えると、寝ている水麒麟に向かってふたたび一礼する。

すっかり見とれていた瞬星も、倉皇に袖を引いて合図され、一緒になって頭を下げた。

しかし水麒麟の方は気がついた様子もなく、身動きひとつせずにごうごうと鼾をかいている。

高い石段を上ると、遠くに『玉清殿』と記した金色の扁額(へんがく)が見えた。

雄壮宏大な本殿は、門扉が大きく開け放たれて、明るい内部には元始天尊(げんしてんそん)・霊宝天尊(れいほうてんそん)・道徳天尊(どうとくてんそん)の〈三清(さんせい)〉(道教の最高神)が奉られ、荘厳な空気を漂わせる。

神像の前に数十人が立っていた。

道士あり在家(ざいけ)のものあり、みな青雲門の門人らしい。

人々の前には紫檀(したん)の大きな椅子が七脚、正面にひとつ、左右に三つずつ並んでいたが、席についているのは六人で、右端のひとつは空席だった。

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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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