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Category: 誅仙小説  

第5章 入門



第5章 あらすじ
青雲門の総本山内の『玉清殿』へ連れてこられれた瞬星と倉皇。
青雲山の麓で起きた悲惨な事件を調べ始めた青雲門の一同。事件の起きた村で生き残った彼らは、『道玄真人』の考えにより、青雲門の弟子として迎えることとなった・・・



第5章 入門

 人々はざわついていて、何事か議論しあっているようだった。瞬星と倉皇を案内してきた若い道士は、戸口の外で身じまいを正し、かしこまって声をかける。「掌門(しょうもん)、師叔のみなさま、わたくし常箭(じょうせん)、ご命令どおりこちらの......」
 言い終えぬうち、神聖でおごそかな本殿に、すさまじい悲鳴が響きわたった。「化け物、鬼だあ!化け物だあ......」
 常箭はぎょっとしたが、それ以上に驚いたのは少年ふたりだ。甲高くうわずっているが、よく聞きなれた声だったのだ。瞬星はなりふり構わず本殿に駆けこんだ。
「王おじさん、王おじさんなの?」
 張り上げた声は切迫し、嗚咽をにじませている。人々はみな不憫に思った。一同のうしろ、壁の片すみに、木こりのなりをした中年の男が、頭を抱えてうずくまり、全身をがたがたと震わせている。
 指のあいだからは「化け物、化け物......」とつぶやく声が絶え間なく漏れていた。
 それはまぎれもなく草廟村(そうびょうそん)の木こり王老二(おう ろうじ)だった。気だてがよくて笑顔を絶やさず、子供たちにも親切で、柴刈りに行ったついでに、よく山の果物を取ってきて皆にくれたものだ。
 瞬星は彼のそばに駆け寄って、力いっぱい肩をつかみ、大声で呼びかけた。「王おじさん、いったい何があったの? どうして、どうして村のみんなは死んじゃったの? 父さんは? 母さんは? どうなったの? ねえ!」
 立て続けに問いかけられて、王老二は何か感じたらしく、口を閉じてのろのろと顔を上げ、少年を見た。
 人々がさっと顔色を変え、一斉に口をつぐむ。椅子に坐っていたものも、幾人かは腰を浮かしてこちらを見た。
 だが王老二の目は血走り、恐怖と惑乱の色に覆われている。まじまじと瞬星を見つめながら一言も発せず、眉根を寄せて懸命に考えこむ様子だ。
 門人のひとりが見かねて一歩踏み出し、声をかけようとしたが、はたの者にそっと制止される。
 瞬星は相手の反応がないのに焦って大声をあげた。「王おじさんてば、どうしちゃったの?」
 すると王老二は体をぶるっと震わせて、恐怖の色をあらわにし、いきなり這うようにして逃げだすと、ふたたび頭を抱えて丸くなった。「化け物、化け物、化け物だぁ......」
 本殿のあちこちから嘆息が漏れ、一同は失望の色を浮かべる。腰を浮かせたものたちも、しおたれて椅子に坐りこんだ。なお問いかけようとした瞬星は、倉皇にぐいと引き止められた。
 怪訝に思ってふり向くと、倉皇の目には涙があった。「無駄だよ。もう正気を失くしてる」
 瞬星は頭をガンと殴られたような気がして、棒立ちになったまま言葉を失う。
 倉皇は彼よりひとつ年上で、細かいところに気が回る。周りの人々を見渡すと、みな青雲門(せいうんもん)のお仕着せを着て、男と女、道士(どうし)と在家(ざいけ)が入り交じっている。大半が武器を身に帯びており、なかでも多いのは長剣だった。椅子にかけている六人は、一同のなかでも群を抜いて風格がある。道士と在家が半々で、中央のひとりは濃緑の道袍(どうほう)姿に仙人めいた風貌、明るく温かみのあるまなざしをしている。名高い青雲門の領袖・道玄真人(どうげんしんじん)にほかならない。
倉皇はすぐさま瞬星を引っぱって六人の前に進み出ると、道玄の前にひざまずき、頭を床に打ちつけた。
 道玄は二人をつぶさに眺め、そっと嘆息した。「不憫な子らだ。立ちなさい」
 しかし倉皇は立ち上がらず、悲痛な声で訴える。「真人さま、ぼくらは世間知らずの子供で、こんなことになってしまって、どうしていいか分からないんです。真人さまは過去も未来も見通せる大きな力をお持ちの方、どうかぼくらをお助け下さい」
 瞬星はそれほど能弁でないうえ、すっかり混乱していたが、「そうだよ、仙人のお爺さん、助けておくれよ」と口を添える。
 天真爛漫な物言いに、一同は思わず微笑を浮かべたが、すぐ倉皇に視線を移す。
 年端もいかぬ少年が大惨事の直後、しかも道玄真人ほどの著名な大家を前にして、これほど筋道立った口がきけるとは、子供らしからぬ冷静さだ。
 草廟村の虐殺は、千年このかた見たことも聞いたこともなく、しかも自分たちの膝元で起きた事件とあって、青雲門は大きな衝撃を受けていた。報告を受けた道玄はおどろき怒り、ただちに分派の首座(しゅざ)たちを召集した。この場には小竹峰(しょうちくほう)分派の水月大師(すいげつたいし)を除く五派の首座がそろっている。
 青雲門七大分派の首座がつとまる人物といえば、一門でも選りすぐりの逸材、そして青雲門で選りすぐりの逸材ならば、天下の修道者のなかでも頂点を占める。その慧眼(けいがん)の士が一様に、心中で(金の卵だ)とつぶやいた。
 道玄は微笑を浮かべた。「過去や未来のことは分からぬが、そなたら青雲山の下に住むものを見過ごにはいかぬ。ただ、いくつか訊きたいことがあるゆえ、しかと答えてほしいのだ」
 倉皇はうなずく。「はい、知っていることはすべてお話しいたします。どうぞお訊ね下さい」
「そなたらはどうやってこの災厄から逃れたのだ?」
 倉皇は一瞬詰まってから答えた。「真人さま、昨夜のことは、家で寝ていたことしか覚えていないのです。朝に目がさめると、どうしたわけか、この瞬星と一緒に村はずれの松の樹の下に寝ていました。そのあと瞬星に起こされて、村に駆け戻ってみたら、あ、あ、あの光景が目に入って、気を失ってしまいました」
 道玄はかるく眉をひそめ、瞬星に向き直る。「そなたが先に起きたのか。では、そなたはどうだった?」
 瞬星はすこし考えてから答えた。「どうやってあそこに行ったのかはぼくも覚えてません。目がさめたらこいつが隣にいたから、起こしたんです」
 道玄は首座たちと困惑のまなざしを交わした。達人が救いの手を伸べたのだとしたら、この二人だけを救ったのは不可解だ。しかし、それ以外の可能性はあり得ない。
 道玄はしばらく考えこみ、訊ねた。「すると、そなたらは昨夜のことについて何も知らぬのだな?」
「はい」二人は同時に答える。
 道玄は嘆息し、「宋大仁(そう たいじん)!」と呼ばわった。
「はい、ここに」門人のひとりが進み出る。大柄で体格がよく、在家の装束だ。小柄で太った首座の後ろに立っていたから、その男の弟子なのだろう。
「草廟村の件を最初に見つけたのはおまえだったな。その時の様子をもういちど話しなさい」
 宋大仁の声は太くてよく通った。「はい。けさ早く、わたくしどもは用事を済ませ、空を飛んで帰るところでした。草廟村の上まで来てふと見下ろすと、二百あまりの亡骸が山積みになっていたのです。見るも無惨なありさまでした。急ぎ下りて調べたところ、裏手でこの子らが気を失っているのを見つけ、一足先に連れ戻らせました。それから、村はずれの厠の中で」といって王老二を指さし、「この男を見つけましたが、目はうつろで魂が抜けたようなありさま、何を聞いても返事せず、『化け物、化け物』とくり返すばかりでした」
 倉皇が身ぶるいし、わななく声で訊ねた。「すみませんが、人数は確かめてごらんになったのですか?」
 宋大仁の目に同情の色が浮かぶ。「ふだん村と取引していて、村人の事情にくわしい仲間に手伝ってもらったよ。全部で四十二家族あわせて二百四十七人、おまえたち三人を除いてみな死んでいた」
 とうに予想はしていたものの、そうはっきりと聞かされると、倉皇と瞬星はやはり目の前が暗くなり、ふたたび気を失いかける。
 道玄がそっと嘆息し、左手を軽く払う。袖口から小さな赤い珠が飛び出し、二人の額や胸の上を転がった。たちまち清凉さが身に沁み入り、張りつめていた神経もゆるんだようで、二人はにわかに疲れがこみ上げ、その場に横たわって寝入ってしまった。
 道玄が手をふると、立っていた弟子たちはみな一礼し、順序よく退出した。本殿には六人の首座だけが残る。
 例の小柄で太った男が口を開いた。「掌門師兄、〈定神珠(ていしんじゅ)〉でこの子らを眠らせられたはいいが、目がさめた後はどうなさるおつもりか?」
 道玄はしばらく沈思してから、左側の先頭に坐る道士に面を向けた。「蒼松(そうしょう)師弟、おぬしはどう思う?」
 蒼松道人(そうしょうどうじん)は大柄でおごそかな顔つきの男で、龍首峰分派の首座をつとめる。青雲門では道玄真人の長門(ちょうもん)を除き、もっとも勢力の強い分派だった。蒼松は厳格な性分で、自分の弟子たちだけでなく、一門全体の処罰関連も受け持っている。門人たちは道玄を尊敬してやまないが、いちばん怖れているのはこの厳めしい蒼松首座なのだ。
 さて、蒼松は濃い眉を寄せて考えこみ、しばらくしてから答えた。「この一件には疑わしい点が多く、すぐには真相を明かせますまい。ただ、草廟村の民は純朴なものたちで、その生き残りを無下にはできぬ。この二人を門下に引き取るのがよろしかろう」
 道玄はうなずく。「いかにも、わしもそのように考えておった。身寄りを失くしてしもうたのだから、われらが面倒を見てやらねば。ただ、わしはもう長年弟子を取っておらぬ。誰か、この子らを引き取りたいものはおるか?」
 小柄で太った男、大竹峰(だいちくほう)分派の首座田不易(でん ふえき)がいった。「恐れながら、この二人を同じ師のもとで学ばせるべきではないと存じます。似た境遇の持ち主ゆえ、ともに過ごせば顔を合わせるたび昔のことを思い出し、前向きな気持ちになれますまい」
「たしかに。幼い身空でこのような惨事に遭ったのだから、恨みの念をよくよく解きほぐしてやる必要がある。なるほど二人は引き離したほうがよかろう。では、おぬしらのうち誰か二人に、一人ずつ引き取ってもらうことになるな」そういって、道玄は人々に目をやった。
 蒼松、田不易ら五人の視線は、ほとんど同時に倉皇に吸い寄せられて離れない。かたや瞬星に目を向けるものはなかった。
 修行には天性の資質がきわめて大事で、天才のひらめきは百年の修行にも勝るという。わけても青雲門の人々はそのことを身にしみて知っていた。かつて青雲門を立て直し、現在の地位に導いたのは、ほかでもなく若き天才・青葉祖師(せいようそし)が古文書を読み解き、代々の先人を一挙に超えたためなのだから。
 また、よき師が得がたいのと同様に、資質にすぐれた弟子も貴重なものだ。天分にめぐまれた倉皇に首座たちが注目したのは当然である。
 しばしの沈黙の後、田不易が咳払いして口を切った。「その...掌門師兄、ご存じのとおりわが大竹峰は人数が少ない。一人お引き受けいたそう」
 倉皇を指さそうとした矢先、朝陽峰(ちょうようほう)分派の商正梁(しょう せいりょう)が機先を制して立ちふさがる。「掌門師兄、わしはこの子を一目見て気に入り申した。これも前世の縁かと思い、手元に置きたく存じまする」
 青雲門の歴史は古く、各分派は表向きなごやかでありながら、水面下では競争心を抱いている。この倉皇なら第二の青葉になれぬとも限らず、かりに芽が出なくとも弟子が増えるだけのこと、他の分派にみすみす機会をゆずる道理はない。
 商正梁が言いおえるが早いか、落霞峰(らっかほう)分派の天雲道人(てんうんどうじん)が脇から口を出した。「商師兄、そちらの弟子はもう二百を超えておるではないか。その全員と前世の縁があるとしたら、おぬしの縁とやらはいささか多すぎではあるまいか」
 商正梁が赤面して口を開きかけたところへ、田不易が割って入る。「天雲師兄の言われるとおりだ。弟子の数でいえば、おぬしらはいずれも百を超えるが、わが大竹峰ときたらわずか七人きり、なんとも体裁が悪い。いっそ......」
 蒼松道人がその言葉を断ち切った。「田師弟、われらがすべきことは、この不憫な子らをできる限り世話してやることで、弟子の数など論じておる場合ではなかろう」
 そして道玄に向かい拱手の礼をとる。「掌門師兄、この子はたしかに逸材です。わが門下に加えてくだされば、心を尽くして教え導き、一人前に育てあげて、村人たちの供養といたしましょう」
 道玄が考えこんだのを見て、田不易、商正梁らは(まずい)と思った。案の定、しばらくしてから道玄は、「蒼松師弟の申すことも道理だ。では、この子はおぬしに任せよう」
「かたじけない」蒼松は微笑を浮かべる。
 蒼松とつきあいの長い一同は、日ごろ喜怒哀楽をあらわさない彼がこうして微笑しているのは、内心で大喜びしている証だと知り、内心むらむらと腹が立った。だが、すでに道玄の裁定が下りたうえ、龍首峰分派の勢力もはばかられ、怒りを胸におさめるしかない。
 道玄はしばし沈黙してから、切り出した。「では、こちらの子は......」
 商正梁は咳払いして目を閉じ、天雲はいきなり天井板の模様に気が向いた様子で宙に目を泳がせ、田不易は乾いた笑いを漏らしてから、急な睡魔に襲われて舟を漕ぎはじめる。最前はくちばしを挟む間もなく油揚げをかっさらわれた風回峰(ふうかいほう)分派の曾叔常(そうしゅくじょう)は、最初から興味などなかったという態を装い、さっさと瞑想に入っている。
 一人勝ちの蒼松だけが冷ややかな目を皆に向けたが、こちらは内心の笑みを隠し切れない。
 このありさまにはさすがの道玄もいささかばつが悪くなったものの、まさか正面きってああだこうだと咎め立てるわけにもいかない。すかさず思案をめぐらせて、白羽の矢を立てる相手を見つけ出した。
「田師弟」道玄の笑顔はことさらに優しい。
 田不易はぎくりとして跳ね起き、口を開きかけたが、道玄に先を越された。「草廟村の一件に気づいたのは、おぬしの弟子の宋大仁だ。どうやらこの子は大竹峰と少なからぬ縁があると見える。そういうわけで、おぬしが引き取ってやってはくれぬか」
 田不易は大いに焦った。瞬星の凡庸さは一目で見てとれる。弟子にしても足手まといになるだけだ。固辞しようとしたが、どっこい道玄はそのいとまを与えない。「よし、これで一件落着だ。皆はよくよく気をつけてこの事件を調べてほしい。よいな?」
 蒼松らは一斉に席を立ち、「承知しました」と答える。
 道玄はうなずいて咳払いし、田不易には目もくれずに早足で奥の間に去った。その姿が消えたとたん、玉清殿(ぎょくせいでん)にはどっと笑いが響きわたる。
 大竹峰の弟子宋大仁はずっと戸外に控えていたが、ようやく首座たちが出てきたのを見て迎えにいくと、師匠の田不易が瞬星を抱えているのでびっくりした。「師父、どうなさいましたか?」
 田不易は彼を見るなりカッとして叱りつけた。「何がどうしただ、たわけ! 早く受け取らんか!」
 宋大仁はあわてて寝たままの少年を受け取る。ぷんぷんしていた田不易は、一緒に出てきた同輩たちがなおも忍び笑いしているのを横目にとめ、いっそう頭に血を上らせて怒鳴った。「急げ、何をぼんやりしている!」
 言い終えるなりふり向きもせず、右手で空を切ると、朱の光芒がひらめいて、赤い長剣が宙にあらわれる。彼は身動きひとつ見せずに剣を踏まえ、すさまじい速さで飛び去っていった。
 宋大仁は狐につままれた心地だが、自分に後輩ができたことだけは理解できた。ふところに抱いた少年に目をやり、語りかける。「弟よ、まだ名前も聞いていなかったな」
 眠りの中にいる瞬星は、自分の運命が大きく方向を変えたことなど、いまだ知る由もなかった。

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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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