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Category: 誅仙小説  

第6章 弟子入り


第6章のあらすじ
青雲門の大竹峰の弟子入りした、瞬星。
大竹峰の弟子達の間で恐れられる、首座の秋霜の娘"威吹"が現れ、【法宝】と呼ばれている赤い琥珀色の布を自在に操りだした。
華麗に舞う威吹の姿に、思わず見惚れてしまった瞬星であった。



第6章 弟子入り

 ようようにして眠りから覚めた瞬星は、しばし呆然としてからゆっくりと身を起こした。これまでの記憶がどっと脳裏によみがえる。
 何もかもが悪い夢のようだ。
「起きたのか、よかった」戸口で声がして、誰かが入ってきた。
 目を上げると、通天峰(つうてんほう)で見かけた宋大仁(そう たいじん)だ。見知った顔に出会って、なぜか幾分ほっとした。
「宋兄さん」
 大の男の宋大仁も、さすがにいささか不憫になって、寝台に歩み寄ると少年の頭をなでた。「小師弟、くよくよするな、これからはおれたちが家族だからな」
「家族?」瞬星はぽかんとする。
 宋大仁はほほ笑みながら事のいきさつを話して聞かせる。もっとも、首座(しゅざ)たちのちょっとした諍いについては、むろん彼は知らなかった。
 聞き終えて瞬星は途方にくれた。青雲門といえば、かれら農民にとっては神仙のような存在で、まさか自分がそこに迎えられようとは思ってもみなかった。とはいえ、そのために払わされた代価はあまりにも大きい。
 あれこれ考えてもしかたない。彼はぐっと歯を噛みしめ、呼びかけた。「宋師兄」
 宋大仁は笑ってうなずく。「よし、よし。では小師弟、一昼夜も寝ていたんだから、きっと腹が減ったろう?」
 とくに意識はしていなかったが、言われたとたんに腹がグウグウと鳴りだす。
「なら、まずは腹ごしらえだ。食べながら色々と説明してやろう。それから師父(しふ)と師娘(しじょう)にお目通りして、兄弟子たちに挨拶だ」
 瞬星はうなずいて寝台から下りた。この部屋は通天峰の弟子部屋と大差ない作りだが、もっとゆったりしているようだ。
「ここ大竹峰(だいちくほう)は他の分派と違って人が少なく、おまえを入れても十人足らずだ。だから部屋が広く作ってあるのさ」宋大仁は歩きながら説明した。
 戸外はやはり似たような作りの中庭で、数歩も行くとまた回廊に出た。しかし、ここでは建物の数はせいぜい十数棟、通天峰の規模にはとおく及ばない。
 厨房に向かう道すがら宋大仁が説明したところでは、大竹峰は青葉祖師(せいようそし)の四番弟子・鄭通(てい つう)に始まり、今の秋霜(しゅう そう)まで六代を経ているが、そのあいだ人の多かったためしがない。現在、上の世代は首座の秋霜と、その妻でもある妹弟子・時雨(とき さめ)の二人きりだ。かれらの間には一人娘の威吹(いぶき)がいて、瞬星よりふたつ上の十三歳、したがって瞬星は名実ともに小師弟(末弟子)ということになる。
 秋霜の弟子は宋大仁を筆頭に、呉大義(ご たいぎ)、鄭大礼(てい たいれい)、何大智(か たいち)、呂大信(りょ たいしん)、杜必書(と ひっしょ)とつづく。
「大仁師兄、大義師兄、大礼師兄、大信師兄、大書師兄......」瞬星が懸命に覚えこんでいると、宋大仁が笑って訂正した。「必書師兄、だ」
「え? どうして一人だけ字が違うの?」
「もとは『大書』だったんだがね、何度か声に出して言ってごらん」
「杜大書、杜大書......あ、杜大叔(杜叔父さん)だ」瞬星はハタと気づいて笑いだした。
「そういうわけだ。師父はあまり気にしなかったが、師娘が失礼だと怒り出してね、折檻しようとしたものだから、杜師弟は震え上がって改名してくれるよう頼んだ。それで、師娘が必書という名をつけたんだが......これも何度か言ってごらん」
「杜必書、杜必書......賭必輸(賭けに必ず負ける)か!」瞬星はプッと噴き出し、腹を抱えて大笑いした。
 少年を笑わせて気を紛らそうとしていた宋大仁は、もくろみが図に当たったので、嬉しくなって自分も笑った。「杜六弟は入門前は博打(ばくち)に目がなくてね。縁あってここに来てからは金は賭けなくなったけど、賭け事は今でも大好きなので、師娘が戒めとしてこの名をつけたのだ」
 何といってもまだ子供である、声を立てて笑ったことで、瞬星はだいぶ気が楽になり、この兄弟子の優しさに、恐怖と不安も次第にやわらいできた。
 厨房で腹を満たすと、宋大仁は少年を大竹峰の本殿〈守静堂(しゅせいどう)〉に伴った。大竹峰分派の全員が集まっている。本殿の床には赤レンガが敷かれ、石の柱に素焼きの屋根瓦、正面の床には大きな太極図が刻まれて、全体にごく簡素な作りである。
 前に置かれた二脚の椅子には秋霜と三十すぎの端正な婦人が腰かけていた。その側には、愛らしい大きな目をくるくるさせた美少女が立っている。
 残り五人の弟子たちは、身長も体格もさまざまだったが、下手に一列に並んで立ち、みな瞬星に目を向けていた。
 宋大仁は本殿の前に出てうやうやしく言った。「師父、師娘、小師弟を連れてまいりました」
 秋霜は面倒くさそうに生返事しただけだが、師娘の時雨は瞬星を観察してから、「大仁、この子は一昼夜寝ていたのでしょう。お腹がすいているだろうから、さきに何か食べさせておやり」
「はい、師娘、さきほど厨房に連れていって食べさせました」
 時雨はうなずいて秋霜をちらりと見やると口をつぐむ。秋霜はフンと鼻を鳴らした。「では始めるか」
 事態が呑み込めずにいる瞬星に、宋大仁がささやきかける。「ひざまずいて師匠にご挨拶するんだ」
 瞬星はただちに膝をつき、ゴン、ゴンと力をこめて額を地に打ちつけた。
 少女――威吹が我慢できずにウフフと笑いだし、時雨も微笑する。「よい子だね、叩頭(こうとう)は九つすればよいのですよ。」
 瞬星が「はあ」と答えて顔を上げると、額がすっかり赤くなっているので、一同はみな笑いだしたが、秋霜はげんなりした。こんなうすのろをこの先指導するのかと思うだけで、ただでさえ重い頭がいっそう重くなってくる。
「よし、ではこうしよう」彼はうんざりして手をふった。「大仁、おまえから一門の戒律や基礎の訓練を教えてやるがいい」
 宋大仁は承知してからややためらい、「ですが師父、この子はまだ小さいので、弟子としての訓練は......」
「規則どおりにやれ」秋霜は目を三角にして吐き捨てると、席を立ってふり向きもせず奥に引っこんだ。弟子たちは一斉に頭を下げて師を見送る。
 師が去って人々が口を開くより早く、威吹がひらりと飛び出して、少年をためつすがめつした。瞬星の鼻先でしきりにちらつく花のようなかんばせは、幼いながらすでに佳人の面影があり、村でこれほどの美少女を見たことがなかった彼は、思わず顔を赤らめた。
「アハハ」威吹は宝物でも見つけたように彼を指さしてはしゃいだ。「兄さんたち、見て、この子ったら、わたしを見て赤くなったわ」
 本殿はどっと笑いに包まれ、瞬星はますます赤面する。時雨がやって来て笑いながら叱った。「威吹や、師弟をいじめてはだめよ」
 威吹は舌を出したが、母の叱責など気に留めたふうもなく、瞬星の前で背をそびやかした。「あんた、わたしを師姐(ししゃ)と呼びなさい」
 瞬星はムッとしたが、目の前のきらめく瞳に魂を奪われ、ついつい「師姐」と口走る。
 これまで威吹は大竹峰の末っ子だったから、自分より小さい弟分ができたのが内心うれしくてたまらない。さっそく姉貴風を吹かせにかかった。「いいわ。小師弟、これからはわたしの言うことを聞くのよ」
 瞬星はつかえつかえ「はい」と答える。
 時雨が娘の袖を引き、「おいたはよしなさい」と釘をさしてから、宋大仁に向き直った。「この子はまだ小さくて、訓練はきついだろうから、よく面倒をみておやり」
「はい」宋大仁はかしこまって答えた。
 残り五人の弟子たちは寄り集まってクスクス笑いあい、対岸の火事見物といった風情で、ちらちらと視線を取り交わしている。
 そのとき、時雨が突然奇妙なしぐさをした。体をほぐす時のように頭をぐるりと回したのだ。淑女らしからぬ動作だったが、たちまち弟子たちはぴたりと口を閉ざし、おびえたような表情になる。
「おまえたち......」時雨が咳払いして言いかけたとき、「師娘!」と切迫した声を上げたのは、冷汗を浮かべた宋大仁だ。
「なんなの?」時雨は眉をひそめ、弟子たちも口々に「大師兄、どうした?」と問いかける。
「師娘、わたくしは師父の命により、小師弟に戒律と修行の法を教えねばなりません。これにて失礼いたします」
 時雨は少し考えてからうなずいた。「それもそうね。お行きなさい」
「ええっ!?」残る五人が同時に叫ぶ。
 宋大仁はおざなりに愛想笑いするが早いか、瞬星の体を抱きあげ、「小師弟、どこか静かな場所に行って、まず決まりごとを教えてやろうな......」と口の中でもごもご言いながら、返事のいとまも与えずに出ていった。
 威吹が面白そうに笑いながらついてくる。一方、背後では罵声が上がった。「大師兄の恥知らず!」「臆病者!」

 瞬星は首をひねった。大師兄の一体どこが臆病者なんだろう?
 考えている時、時雨の冷たく澄んだ声が一喝した。「おだまり!」
 本殿はたちどころに静まり返る。
「情けない、腕を試されるのがそんなに怖いの? 六十年に一度の大会まで、あと五年しかないのですよ。前回あんなに師父を怒らせておいて、こんども精進しなかったら、他の首座たちに顔向けできない。さあ! 同時にかかっておいで――」
 宋大仁は足を速め、飛ぶようにして戸口から裏山まで駆け抜けた。肩に負われた瞬星の左右で、木々がビュンビュンと後ろに飛び去る。後ろにいた威吹はいつの間にか緋色の綾絹(あやぎぬ)を投げ上げて、悠然とその上に立っていた。綾絹は赤い琥珀(こはく)のように透きとおり、紅(くれない)の霞をたなびかせて、あきらかに仙術(せんじゅつ)の法宝(ほうほう)である。威吹が印形(いんぎょう)を結ぶと、綾絹はたちまち空に舞い、宋大仁の後につき従った。
 少女が風に乗って飛ぶ姿の美しさに、瞬星は思わず羨望の色を浮かべた。
 それを見てとった威吹は得意満面、彼と並んで飛びながら、「どう、すごいでしょ?」
 瞬星は懸命にうなずいた。「うん、本当にすごいね、布に乗って飛べるなんて!」
 威吹は一瞬ぽかんとしてから、意味を悟って舌打ちし、「ばか!」と言いながら笑いだす。
 あっけに取られた瞬星に、宋大仁が説明する。「布なんて言うものじゃない、この〈琥珀朱綾(こはくしゅりょう)〉は師娘がお若いころに煉成した有名な法宝で、すばらしい力を持っているのだ。わが青雲門でも指折りの宝物を、言うにことかいて『布』だって......」言うなりからからと笑いだした。
 瞬星は真っ赤になって威吹を盗み見たが、少女はにこにこしながらこちらを見ている。両頬には小さなえくぼが浮いていた。
 しばらく行くと、裏山のちょっとした斜面に出た。宋大仁は足をとめて瞬星を肩から下ろす。威吹も地に降り立ち、結んだ手印をほどくと、琥珀朱綾は生き物のように丸まってその腰に巻きついた。一見すると緋色のきれいな腰帯だ。
 斜面には太いのやら細いのやら、竹がいっぱいに生い茂っている。よく見るとふつうの竹とは異なり、節々がすべて黒い。
 宋大仁は竹林を指して言った。「大竹峰分派の決まりでは、入門した弟子はまず毎日ここで竹を伐(き)ることになっている。おまえはまだ小さいから、はじめの三月は一日一本でいい。好きなのを選んで伐りなさい」
 大師兄が世話係を命じられたほどだから、どんなに大変な訓練かと思っていたので、瞬星は拍子抜けした。村の農家に生まれ育ったのだから、山で柴を刈ったことくらいある。とたんに安堵して笑顔になった。「柴刈りならしたことがあります、だいじょうぶ」
 宋大仁はなにか言いかけて思いとどまり、笑っていった。「よし。ではゆっくり戻ろうか。道筋を教えてやるから、次からはひとりで来るんだぞ。帰りがけに門派の決まりごとも話してやろうな」
「大師兄ったら、あわてて飛び出してきたくせに、どうでもいいことばかり言って、おまけにゆっくり帰ろうだなんて。母さんにやっつけられるのが怖い?」はたから威吹が笑いかけた。
 宋大仁は赤面したが取り合わず、もっぱら瞬星に語り聞かせる。「小師弟、よく覚えておくのだぞ。わが一門の第一の戒律は、まず師を敬うこと......」
 そもそも大竹峰分派は、首座の秋霜がものぐさな性質で、体面は気にするくせに弟子の指導を面倒がり、法術の基本を教えたあとは勝手に自学させていた。
 一方、妻の時雨は血の気の多いたちで、若い頃は勇名をとどろかせたが、結婚後はかなりおとなしくなっている。とはいえ、今でもやはり腕は鳴るし、弟子たちはあまりに不甲斐なく、六十年ごとに七つの分派が一堂に会する武術大会でも、宋大仁がたまに一勝を上げるほかは連戦連敗、一門の物笑いになっている。
 気の強い彼女がそれを我慢できるはずもなく、折にふれては夫の代わりに弟子たちに'活を入れ'ていた。見かけこそ大人しやかな美女だが、気が短くて腕もすこぶる立つ時雨は、うっかりすると弟子たちを傷だらけになるまで打ちのめしてしまうので、一同はチビでデブの師父よりも、この美しい師娘を鬼のように恐れていたのだ。
 空はすでに暮れなずみ、太陽が西の地平にかかって、晩霞があざやかに映えている。夕日が大竹峰を照らすなか、大人ひとりと子供ふたりはのんびりと帰途をたどった。遠くの建物があるあたりでは、どこからともなく犬の遠吠えと、それに交じって哀れな連中の立てる悲鳴が響いてくる。

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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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