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Category: 誅仙小説  

第7章 初日


第7章 あらすじ
夕食前、瞬星は、6番目の師兄、杜必書から賭けを持ちかけられた。
和やかな師兄達の雰囲気に親しみを感じた瞬星は思わずその賭けにのってしまう。
その後自分の部屋に帰った瞬星は、普智の形見である珠が放つ奇妙な輝きに気がついた。。



第7章 初日

 夕食時には空は暗くなっていた。
 大竹峰(だいちくほう)の後ろ側はすべて竹林で、人が住む建物は表に集中している。最大かつもっとも重要なのは本殿の守静堂(しゅせいどう)で、秋霜(しゅう そう)の一家三人がその奥に住まっている。守静堂の脇は弟子たちが起居する回廊つきの宿舎だが、人が建物より少ないため、めいめいが一棟をあてがわれていた。新入りの瞬星も例外ではない。住居だけをとってみれば、大竹峰は他の分派よりはるかに好条件といえる。
 ほかにあるのは修行用の太極洞(たいきょくどう)と、厨房に食堂だけだった。このとき弟子たちは食堂に集まっており、六番弟子の杜必書(と ひっしょ)が料理を次々に運んでくる。大半は精進料理で、なまぐさものは少ない。皆は序列どおりに長い食卓の右側に坐った。上手は宋大仁(そう たいじん)で瞬星は末席だ。向かい側には大きな椅子がひとつとやや小ぶりな椅子がふたつ、おそらく秋霜一家の席だろう。
 瞬星は隣の空席に目をやった。忙しく立ち働いている杜必書のものだ。まもなく、配膳を終えて手を洗った杜必書がやって来て、師を待つ一同に加わった。
 杜必書はかなり若そうな男で、顔は痩せて尖り、大きな切れ長の目をいつもすばしこく動かしている。席につくと瞬星に目をやって笑いかけた。「小師弟、名はなんという?」
「瞬星です」
「おれは六番めの師兄、杜必書だ」
「はい、六師兄」
 少年がうやうやしく挨拶すると、杜必書はコホンと空咳をしてその肩を叩いた。「後でおれの料理を味見してくれよ」
 食卓いっぱいに並んだ料理はすばらしい匂いを放っていたから、瞬星は思わず生唾を呑みこみ、こくりとうなずいた。
 すると杜必書は突如いわくありげな笑みを浮かべ、食堂の入口を指す。「もうすぐ師父たちがお出ましになるが、ひとつ賭けをしないか?」
 瞬星はぽかんとしたが、残りの者たちはみな笑顔でふり向いた。杜必書の上座にいる五番弟子の呂大信(りょ たいしん)が笑っていう。「六弟、また博打中毒がぶり返したな」
 肉のそげた面立ちの何大智(か たいち)も笑った。「あまり勝てないものだから、とうとう子供を騙しにかかったか」
「しっ、しっ!」杜必書は手を振って取り合わず、少年に満面の笑顔を向ける。「いいか、師父の家族三人のうち、だれが一番先に入ってくるか当てるんだ。うん、おまえは新入りだから、おまけして先に当てさせてやろう」
 二番弟子の呉大義(ご たいぎ)が離れたところで声を張り上げた。「小師弟、賭けるなら先に条件を決めておけよ」
 杜必書はフンとせせら笑った。「おれがごねると思うのか? はばかりながらこの杜必書さま、賭け方のきれいさで江湖に聞こえているんだぞ。(「ただ勝てないだけだよな!」と一同は大笑いだ。)こうしよう、おまえが勝ったら代わりに十日間竹を伐(き)ってやる。負けたら十日間皿洗いを手伝え。どうだ?」
 一同またもや大笑い、宋大仁も笑いながら「なさけないぞ!」と野次をとばす。
 兄弟子たちが皆にこやかで親しみやすく、自分をすっかり身内あつかいしてくれるので、瞬星は胸が温かくなった。「いいよ」
 杜必書は腿をパンと叩き、とたんに生き生きと顔を輝かせた。「よし、では誰が先だと思う? 師父か、師娘か、小師妹か?」
 みなの視線を一身に浴びて、瞬星は思案した。(青雲門は師を重んじるから、きっと秋霜師父が先頭にちがいない)そこで声高に言った。「師父が先だと思います」
 一同はどっと笑い、呂大信が首をふりふりこぼす。「なんてこった、とうとう六弟に勝ちをかっさらわれたぞ」
 杜必書は有頂天になって、困惑する少年を見ながらケラケラ笑う。「教えてやろう。三人の中ではいつも小師妹が真っ先に駆けこんでくるのさ。ハハ、あとで皿洗いをよろしくな」
 瞬星は頭をかき、つられて笑いだした。「はい、六師兄」
「六弟、そりゃないぜ」背が低くずんぐりした三番弟子の鄭大礼が笑っていう。
 杜必書は目玉をひんむいた。「なんだと? 別におれが無理強いしたわけじゃないぞ。お互い納得ずくじゃないか、なあ、小師弟?」
 瞬星がうなずいたとき、宋大仁が言った。「師父のお出ましだ」
 一同は面をあらためて立ち上がり、戸口の方を向いて師を待った。ほどなく、秋霜の肥えた姿が戸口にあらわれ、その後ろには――
 だれもいなかった。
 秋霜ひとりきりだ。
 一同が唖然とするなか、杜必書が急きこんで訊いた。「師父、師娘と小師妹は?」
 秋霜は彼をちらりと見て淡々と答えた。「実家に帰った」
 みなは仰天したが、すぐに幾人かがこらえ切れずに笑いだす。悠然と入ってくる秋霜を見ながら、瞬星は笑いたくても笑えない微妙な顔をしているし、杜必書は目も口もぽかんと開いたままだ。
 秋霜は自分の席につくと、「始めるぞ」と手をふった。
 そこで一同はようやく腰を下ろし、笑みを含んだ顔つきで杜必書を見る。秋霜は瞬星に目をやり、宋大仁に訊ねた。「規則と戒律を教えてやったか?」
「はい、十二の規則と二十の戒律はみな教えました。来たばかりで疲れているだろうから、法術の基礎は明日きちんと教えます」
 秋霜はうなずき、瞬星に声をかける。「おい、七番」
 瞬星は隣の杜必書にこづかれて、やっと自分が呼ばれたと知り、あわてて立ち上がった。「はい、師父」
 秋霜は首をふり、内心でこの鈍い新入りへの評価をさらに一段下げた。「まずは大師兄について学ぶのだ。いいか、道術が海なら勤勉は舟、たとえ資質の劣るものでも、苦をいとわずに努力を重ねれば、いずれ大成せぬとも限らぬ。分かったか?」
「はい」瞬星はかしこまって答えた。
「では食べよう」秋霜は手をひと振りする。
 まだ体の小さい瞬星には、少しでも遠いところの料理は箸が届かないが、隣の杜必書が親切に取り分けてやっては、小声で「もっと食えよ」と笑いかける。なるほど本人が自負するとおり、賭けに負けたことなどちっとも気にしていないようだ。
 瞬星はありがたく世話にあずかり、しばらくしてからこっそり訊いた。「六師兄?」
「何だ?」
「師娘にも実家があるんですか?」彼の小さな頭の中では、青雲門の人々はみな神仙の一員で、俗世間のような縁故はないものとばかり思っていたのだ。
「そりゃああるさ、師娘だって人間だもの。だがな、師父がおっしゃったのは本当の実家じゃない、小竹峰(しょうちくほう)の水月(すいげつ)師叔のところさ」
「ええと?」
 首をかしげる少年に向かい、杜必書は声をひそめた。「師娘はもともと小竹峰分派の出でな、あっちの首座の水月大師とは姉妹弟子で仲がいいんだ。それがまたどうしたことか、あんな美人がよりによってうちの師父に嫁いだもんだから、青雲門の男の師叔たちは当時みんな合点が行かなかったって話だ......」
 コツン!と音を立てて、一本の箸が杜必書の額に命中した。かなりの衝撃だったとみえ、赤い痕が残ている。肝をつぶした二人が目を向けると、秋霜が満面に怒りをみなぎらせ、手にした箸の片方が消えうせていた。杜必書は瞬星に向かってチロリと舌を出してみせ、あとは二人とも神妙にうつむいて黙々と飯をかきこんだ。
「師父、このたびの集まりで、水月師叔だけお見えにならなかったのはどうしてですか?」宋大仁が訊ねた。
 秋霜は鼻を鳴らして、箸を一膳あらたに取る。「また例の仮病だ、頭が痛いの熱があるのと伝えてよこしおった。真に受ける掌門(しょうもん)も掌門だ。フン、もしも水月が来ておったら、わしとて良い方が手に入らなくても、ば......」
 四番弟子の何大智がコホンと咳払いしてから小声でいう。「師父、小竹峰は男の弟子を取りません」
 秋霜はグッと詰まり、首をふった。「あいつもあいつだ、水月の具合が悪くなったら、たちまち大げさに騒ぎ立て、娘を連れて駆けつけおる。まったく」
 弟子たちは目と目を見交わして喜色を浮かべる。「師娘は向こうに幾日おられるご予定でしょうか?」宋大仁がためらいがちに探りを入れた。
 秋霜は彼をじろりと睨み、「幾日も何もない、今夜のうちには戻ってくる」とぶっきらぼうに答える。
「はあ......」あちこちからため息が上がり、一同は失望をあらわにした。秋霜は彼らを眺めわたしてから、またもや鼻を鳴らし、 宋大仁に問いかける。「あれは今日またおまえたちを訓練したのか?」
 当人が答えるより先に、二番弟子の呉大義がすかさず割って入った。「お訊きになっても無駄です、大師兄は卑怯にも訓練を逃げ出したんですから」
「うそをつくな、おれは師父の命令で小師弟を......」
 色をなして言いかけた宋大仁に、一同はヒューヒューと抗議の声を浴びせた。
 半刻(はんとき)ばかりして食事が終わり、人々が立ち去った後、瞬星は残って皿洗いを手伝おうとしたが、杜必書は笑って固辞した。「ありがたいが、ここはおれひとりで間に合ってる。賭けはお前の勝ちなんだから、明日はちゃんと竹を伐ってやるさ」
 気のとがめた瞬星が何か言おうとした矢先、宋大仁の声がした。「六弟、それはだめだ」
 声とともに当人が食堂に入ってくる。「小師弟、おいで、部屋まで案内してやろう」
 瞬星はうなずいたが、杜必書は納得いかない様子だ。「どういうことだ、大師兄?」
「この子は入門したてで、基礎をしっかり身につけなくてはいかん。まだ楽をしていい時期じゃない」
 杜必書は頭をかいた。「それもそうだな。ならこうしよう、小師弟、今回のことはおれの借りってことにしておく。この先なにかおれに頼みがあったら、いつでも声をかけてくれ、いいな?」
「それより、賭けはなかったことにしませんか。どうせ......」
 瞬星が言いかけると、彼は真顔になってきっぱり言った。「なんだと、このおれさまが白黒の区別もつかん男と思うか。言ったことは必ずやる、でないと師兄たちの物笑いのたねだ」
(白黒の区別とこれと何の関係があるんだろう?)瞬星はうなずいたものの釈然としない。
 宋大仁が少年の手を引いた。「行こう、おまえの部屋が用意してある」
 厨房を出ると、空はもうとっぷり暮れて、昇りそめた丸い月が東の空にかかっている。守静堂のそばを通りかかると、灯りはみな消えて中は真っ暗、表を月光が照らすばかりで、なにやら物恐ろしい気配だ。
 さらにしばらく歩いて、弟子たちの住む回廊に戻った。宋大仁は瞬星を右手の一番奥にある部屋まで連れていき、言った。「昼間おまえが目を覚ましたあそこはおれの部屋だ。ほかの兄弟子たちの部屋も序列どおりに並んでいる。みんな右側で、左側の七つは空き部屋だ」そこで言葉を切り、少年を見ながら、「ひとりで怖くないか?」
 瞬星は首をふる。
「そうだな、男たるもの孤独を恐れてはいかん。入りなさい」
 瞬星にとってまだ見知らぬ、だがこのさき長年の住処となる場所には、小さな中庭があり、右手には松、左手には人の背丈の二、三倍ほどある竹が数本植わっている。丸石を敷いた小道の両側は草地になっていて、夜風に木々の葉がそよぎ、かすかな草の香が漂ってきて、すこぶる清浄な趣(おもむき)だ。
 宋大仁は部屋の扉を開け、中に入って灯りをともした。「さあ、入っておいで」
 入ってみると、室内のつくりは宋大仁のものと同じく質素で、机と椅子、寝台と寝具のほかは何もない。
「ひととおり掃除はしておいたから、とりあえずここで寝なさい。山の暮らしはわびしいし、おまえはまだ小さいから、寂しくなることもあるだろう。だが道を学ぶものは、さまざまな試練に耐えねばならん。これからは身の回りのことは自分でやるんだ」
「わかりました」
 瞬星が答えると、宋大仁はうなずいて左右を見渡した。「では、とくに何もなければ、これで帰るよ。一日中いろいろあって疲れたろうから、早くお休み」
 瞬星は戸口まで兄弟子を見送り、ふと思いついて訊ねた。「まだ日が暮れてまもないのに、ほかの師兄たちは外に出て歩いたりなさらないんですか?」
「みんな少なくとも何十年かはここ大竹峰で修行している。外にはめったに出ないから、この中を歩き回るのはとうに飽きてしまったんだよ。四弟は読書が好きだし、二弟は小唄(こうた)をうなるのが趣味、三弟はまじめだから部屋で修行しているが、みんな外は出歩かない」
 宋大仁は笑って少年の頭をなで、さらにいくつか言葉をかけてから立ち去った。
 部屋に戻って扉を閉めると、とたんに世界が咳(しわぶき)ひとつない静寂に閉ざされたようだ。瞬星は机の前に坐ってしばらくぼんやりしていたが、することもないので灯りを吹き消し、上衣を脱いで横になった。幾度となく寝返りをうつうち、いつしかとろとろと眠りに引きこまれていった。
「ああっ!」
 闇の中で小さな悲鳴をあげ、瞬星はがばと身を起こして荒い息をついた。夢の中で村に戻り、両親や遊び仲間、村の大人たちの姿を見たのだ。ところが喜びもつかの間、かれらはたちまち屍(かばね)に変わり、血が川となって流れた。彼は恐怖に身をおののかせ、眠りの淵から覚めたのだ。
 やがて呼吸は徐々に静まり、目も暗闇に慣れてきて、窓のわずかな隙間から月光がひとすじ射しこんで、黒レンガの床を霜がおりたように照らしているのが見てとれた。
 眠気が吹き飛んでしまったので、起き上がって戸口に向かい、ギイッと扉を押し開けた。
 あたりはしんと静まり返り、時折どこからともなくかすかな虫の音がとぎれとぎれに聞こえてくる。さやかな月光が水のように彼の上に降りそそいだ。
 見上げれば、空には無数の星がきらめき、中空高く懸かった月が冴え冴えと明るく輝いている。
「驚羽は今頃どうしてるだろう。やっぱり眠れずにいるのかな」口の中でつぶやいてから、ため息をついて部屋に戻りかけたとき、胸のあたりがフッと軽くなり、何かが肌着の中から転げ出て地面に落ちた。
 びっくりして拾い上げると、紫色でつやがなく、小さな穴のあいた珠だ。あの日普智(ふち)が持っていた数珠の一部にちがいない。一連の大事件で忘れていたが、そういえばこれをどこかに捨てるよう言いつけられていたのだった。
 そこまで思い出したとき、胸に苦いものがこみ上げた。両親は何も遺(のこ)してくれなかったし、一夜かぎりの縁とはいえ家族のように思える普智も、彼に遺したものといえばこの不細工な珠ひとつきりだ。
 月の光にかざしてみると、珠の色はにわかに薄くなり、淡紫に変化した。半透明の内部には青い気が生き物のようにうずまいて、今にも殻を破って飛び出しそうだ。しかし気が表面に近づくたび、小さな〈卍〉の字が浮かび上がってその行く手をはばむ。
 しばらく眺めているうち、瞬星は珠に愛着が湧いてきた。普智の唯一の形見だと思えば、捨ててしまうのはいかにも惜しい。思案のあげく、首に結んでいた赤い紐を解いた。長命と安全のお守りとして両親が身につけさせたものだ。ふつうは金の守り札や銀の首輪だが、貧しいためこれを代わりにするしかなかったのだ。
 珠を紐に通して結び、胸に当たるように掛けると、冷たさの代わりにほのかな温みを感じる。彼は満足の笑みを浮かべ、空の月にもう一度目をやってから、部屋に戻って眠りについた。
 青雲門での初日は、このようにして終わりを迎えた。


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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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