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Category: 誅仙小説  

第8章 修行


第8章 あらすじ
青雲門での本格的な修行が始まった。
瞬星は師姐である威吹とともに、青雲門の入門者にっとての始めての修行である“黒妖竹”を切りに向かうことになった。
外見はほっそりとしているが、中々切り倒せない“黒妖竹”に悪戦苦闘を強いられる瞬星。
果たして、無事に修行を終えることができるのだろうか・・・



第8章 修行

「瞬星!」
 響きは美しいが、耳をつんざくような大声だ。呼び覚まされた瞬星が目を開くと、するどい牙の並んだ大きな口が鼻先にくわっと開いている。仰天して「うわあっ!」と悲鳴を上げた。
「ウフフ…」背後で笑い声がする。
 気を落ちつけてよく見ると、口の正体は大きな犬だった。嵩(かさ)は人の背の半分ほどもあり、毛の色はあざやかな黄で、寝台の上に腹ばっている。その向こう側では威吹(いぶき)が、ぴったりした紅(くれない)の装束を身につけ、腹を抱えて笑っていた。
 瞬星はこわごわ犬を盗み見た。巨大な体に尖った牙、長い舌をだらりと垂らして、いかにも凶悪そうな様子だ。こんなに大きな犬を見たことがないため、少しばかり怖くなったが、威吹がにこにこしているので、口ごもりがちに問いかけた。「師姐、なんの用?」
「なんの用ですって?」威吹はにこやかにそう言うと、気色を一変させて眉間にしわを寄せ、叱りつけた。「とっくに朝よ、なにを寝ぼけてるの! 早く起きなさい、竹を伐(き)りに行くんだから」
「えっ? 師姐も行くんだ?」
「あのね、青雲門(せいうんもん)の弟子は入門してから三年間は山で〈黒妖竹(こくようちく)〉を切ることになってるの。わたしは十の歳から始めて、今年が三年目なのよ。ほら、いつまでぐずぐずしているの!」
 瞬星はあわてて返事をし、犬を注意ぶかく避けて寝台から下り、あたふたと服を身につけた。
「そら、これを持って」威吹がナタを放ってよこす。
 両手で受け止めると、見かけはふつうのナタなのにずしりと重い。支度をととのえてから姉弟子に声をかけた。「大師兄は呼ばないの?」
 威吹は彼をじろりと睨む。「聞いてなかったの、これは入門したての弟子がやる訓練なのよ。今はあんたとわたしだけ。行きましょう」
 言って手を一振りすると、寝台に伏せていた犬がさっと立ち、床に跳び下りて尻尾をふり、瞬星に向かいワンワンと吠え、牙をむいてみせてから駆け出していった。
 この吠え声は、きのう帰りがけに聞いたのと同じものだ。(青雲門の何かすごいって、飼ってる犬までうちの村のよりずっと大きいんだなぁ)と瞬星は思った。
 外に出ると空はまだ明けきっておらず、回廊から裏山の方角を望めば、遠くの山あいを朝霧がおぼろに霞ませている。
 こうしてふたりと一匹は大竹峰(だいちくほう)の裏山をめざした。
 きのう宋大仁(そう たいじん)に背負われて来たときは、それほどの距離とも思わなかったが、自分の足で歩いてみると、まだ半分も来ていないのに、上りはどんどんきつくなり、距離も予想よりずっと遠い。
 一方、威吹はといえば、例の〈琥珀朱綾(こはくしゅりょう)〉なしでも軽快な足取りで、紅く華奢な後ろ姿が山道をすいすいと移動してゆく。犬については言うに及ばず、前かと思えばはたまた後ろ、時おり道端の茂みにもぐり込んでは、しばらくしてからガサゴソと音を立てて別の場所にあらわれる、といった案配で、いきいきと興奮した様子だ。
 さらに小半刻ほど行くと、瞬星はぜいぜいと息を切らし、両足は痛んで重くなり、すっかり疲れ果ててしまった。
 先を行っていた威吹は、そのありさまを見て鼻を鳴らす。「しょうがないわね。少し休むわよ」
 瞬星はコクコクとうなずき、その場に坐りこんで息をあえがせた。犬はどこかへ姿を消している。
 呼吸が整うのを待ちながら、山道の下に目をやると、大竹峰は群を抜いてそびえ立ち、周りの峰々を傲然と見下ろしている。
「師姐、ひとつ聞きたいんだけど……」
 おずおずとした口調とまなざしに、威吹は内心得意になって、無意識に髪に手をやり、しかつめらしい顔を作って答えた。「何よ」
「どうして竹を伐るのが訓練なのさ? 訓練ってのは法術(ほうじゅつ)の勉強かと思ってた」
 威吹は唇をとがらせた。「ばかね。修道者は体が基本なのよ。母さんが言ってたわ、体がしっかりしてないと、最高の法術があっても身につかないって。青雲門は道教が起源だから、養生ということをとても重んじる。法術の修行が進んだら、体はもっと大事になるのよ。たとえばね、青雲門最高の法術のひとつ〈神剣御雷真訣(しんけいぎょらいしんけつ)〉は……」
 瞬星は身をふるわせ、顔色をさっと変えた。
「どうしたの?」
「な、何でもない、なんだか長くて怖そうな名前だなって……」
「そりゃあそうよ、青雲門を鎮護する絶技のひとつで、使える人は一握りなんだから。父さんの話ではね、この技を使うときは、わが身と名剣を仲立ちにして、天から雷神を呼び下ろし、無敵の威力をふるうんだって」
「ふうん……そうなんだ」
「考えてもみなさい、いくら呪文に守られていても、雷に打たれたらふつうの人は死ぬのよ。修道者だって体が弱ければ、術を使うより先に、やっぱり自分がやられてしまう」そこまで言って、威吹は相手をじろりと睨んだ。「だから父さんが竹を伐らせるのはあんたのためを思ってなのよ。ずいぶん嫌そうな顔をしてるけど」
 瞬星はあわてて跳ね起き、しきりに弁解した。「ち、違うよ。師父に失礼なことは絶対しないし、嫌だなんてとんでもない。もうたっぷり休んだから、行こう、先へ」
 ナタを手にとり、ドカドカと大股で駆け上がっていく。かなりの速さで遠ざかる背中を見て、威吹はクスッと笑い、後に続いた。
 やっとのことで例の斜面にたどり着いたころには、瞬星はすっかり息が上がっている。竹林の前にはあの黄色い犬がいつの間にか伏せていて、ふたりを見るとワンワンと吠えたが、起き上がりもせずそっぽを向いた。
「速いなあ!」瞬星はあっけに取られる。
 威吹は息も乱さず涼しい顔で背後から近づいてきた。「大黄(だいおう)のこと?」
「この犬、大黄っていうんだ?」
「そうよ。見くびると痛い目にあうわよ」
「こんなに大きいってことは、二十年は生きてるよね」
「まさか!」
「もっと若いの? ずいぶん育つのが早いんだな」
 不思議がる瞬星に向かって、大黄が猛々しい吠え声を上げた。
「二十やそこらなわけがないでしょ。四師兄が来た時にはいたらしいから七十年、いいえ、三師兄が来た時にもいたって話だから、九十七年にはなるわね。あっ!」
 少女がいきなり大声を上げたので、瞬星は肝をつぶした。「どうしたの?」
「思い出した! 小さいころ母さんが父さんと喧嘩してね、父さんが仔犬から育てたこの子を鍋にするって脅したの。父さんは怒り狂ったし、大黄はふるえ上がってしばらく家に帰らなかったのよ」
「えっ、大黄が?」
「そうよ、この子は長生きして人の言葉が分かるの。母さんの怖さをよく知ってるから、本当に鍋にされては大変だと思って逃げ出したのね。どう、すごいでしょ?」
「うん、すごい!」瞬星は心底から同意したものの、すごいのは大黄なのか師娘なのかよく分からない。ついつい犬に目をやったが、大黄はそ知らぬ顔でくしゃみをし、われ関せずといった風情で尻尾をふると、顔をそむけてゴロリと横になった。
 その間にふたりは竹林の手前まで来ていた。
「通天峰(つうてんほう)に来てすぐのとき、大黄の何倍も大きな怪獣を見たよ。〈水麒麟(すいきりん)〉と呼ばれていたけど、大黄もあれと同じような生き物なの?」
「いいえ、霊尊(れいそん)は天地開闢(てんちかいびゃく)のころから生きている聖獣よ。大黄とはとても比べものにならない」
 いいながら、威吹は瞬星をつれて林の中を進み、やがて、細めの竹が多い場所に出た。ここでは黒妖竹の太さは手の指ほどしかない。
「ここよ。これから三か月、一日にこれを一本切り倒せばいいの」
「こんなに細いのを一本だけ?」
「フフン、試してごらんなさいよ」
 瞬星はうなずいて、一本の細竹に歩み寄り、狙いさだめてナタを振り下ろした。カンと澄んだ音がして、岩を打ったような衝撃に手のひらが痺れわたる。竹はわずかに傾(かし)いだものの、すぐ元の位置にはね返り、枝が瞬星の顔をしたたかに打って、するどい痛みと赤い筋を残した。
「アハハ……」威吹は腹を抱えて笑いこけ、しばらくしてから息を切らして「ここで伐ってなさい、わたしは向こうで自分のを伐るから」というなり、笑いながら背を向けて立ち去った。
 瞬星は傷痕をさすって竹に目をやり、切りつけた場所にうっすらと白い筋が残るばかりなのを見て、驚愕のあまり息を呑んだ。それからというもの、切るの叩くの曲げるの挽くのと手段を尽くして挑んだにもかかわらず、昼近くになって日が高く昇り、全身汗だくになって精根尽き果てても、やっと二分ばかりの切り口ができたにすぎない。
 威吹がなにやら唄を口ずさみながら、足どりも軽く戻ってくると、彼の疲れきったありさまと、件(くだん)の竹を見比べて頭をふり、ナタをかざして切りつけかかる。
「何をするの?」急きこむ少年に向かって面倒くさそうに、「手伝ってあげる」
 瞬星はあわてて首をふり、あえぎあえぎ抗弁した。「ありがとう、でもいいよ。これはぼくの訓練だから、自分でやらなきゃ」
 少女はせせら笑って太陽を指さした。「いま何時だと思ってるの?」
「夜までかかってもやらないと……」瞬星は意地を張ったが、
「ばか!」いきなり怒声を浴びせられ、びっくり仰天して言葉を呑みこみ、目を丸くして相手を見つめた。
 両手を腰にあてた威吹は威風凛々(いふうりんりん)、母親そっくりの剣幕だ。
「ちょっとは周りのことも考えなさいよ。夜までって、わたしも夜まで付き合わせる気? やる気があるなら毎日ずっと努力して、昼までに片づけられるようになりなさい。自分勝手なこと言ってるんじゃないわよ」
 言うが早いかナタをふり下ろし、刃が空を切ったかと思うと、竹はパキパキと音を立てて倒れた。瞬星は目をみはるばかりだ。
「帰るわよ」威吹は彼に目をくれてさらりと言い、林の外へと歩き出した。瞬星は恥ずかしいやら悔しいやら、今後はきっと努力して修行をやり遂げようと決意する。
 疲れた体を引きずって大竹峰に戻ったときは、すでに正午近かった。威吹は口もきかずに守静堂(しゅせいどう)へ向かう。瞬星は一瞬あっけに取られてから、重い足で自室をめざしたが、回廊の入口で一番弟子の宋大仁に出くわした。
 宋大仁は口の端に笑みをたたえて訊いた。「どうした、疲れたか?」
 少年は無理に笑ってみせ、かぶりを振る。
 齢に似合わぬ強情ぶりに宋大仁は苦笑して、部屋までついて行ってやった。
「厨房に湯の用意があるから、これからは戻ったら湯をもらって浴びるといい。あと少ししたら昼飯だから、呼びにくるまで休んでいなさい。飯のあとはまた訓練だからな」
「午後も訓練があるんですか?」瞬星は飛び上がった。
 相手の反応ぶりに宋大仁は気を呑まれたが、すぐにぴんと来て笑いだした。「ああ、言い方が悪かったな。午後はみなが法術を学ぶ時間だ。今日から基本を教えてやろう」
 瞬星はほっと安堵し、声をひそめて訊ねた。「その法術というのは恐くて難しいものですか?」
「深いところまで究(きわ)めれば、それは恐るべきものさ。難しいかどうかは人それぞれだな。ただ心配はいらん、ゆうべ師父がおっしゃったとおり『道術が海なら勤勉は舟』、投げ出さずに続けさえすれば、どんなに難しくてもいつかは自分のものにできる」
 瞬星は力をこめてうなずいた。
 その日の昼食時、秋霜は瞬星に訓練の様子を訊ねたが、威吹が尾ひれをつけてその醜態を吹聴したので、少年は真っ赤になって顔を上げることもできない。
 秋霜は娘の話を聞きながらしきりに首をふり、最後に手を一振りして「食べよう」とだけ言った。
 当人にしてみれば小言をいうのも面倒なだけだが、瞬星の目にはそれがかえって失敗を咎めだてしない寛大さに映る。わが身をかえりみて恥ずかしく、今後はいっそう精進して師の恩に報いようと心に誓った。
 食事がすむと、秋霜はいつもどおりに気取った大股歩きで悠々然と守静堂に引き揚げた。他の弟子たちはこぞって太極洞(たいきょくどう)に向かい、宋大仁だけが瞬星について部屋に戻った。
「青雲門の法術は基礎が肝心だ。おまえは入門したてだから、まず基本を教えてやろう。しっかり覚えて、あとは自分で修行するんだ。分からないことがあれば訊きに来なさい。いいな?」
 瞬星は胸をときめかせて幾度もうなずく。
 宋大仁は真顔になって続けた。「もうひとつ言っておかねばならないことがある。わが一門の法術は精妙で、多くの外道(げどう)や妖人につけ狙われている。だから誓いを立てるのだ、身につけた教えは決して外部に漏らさぬと」
 瞬星はぎくりとして、ふと目がくらむような心地がしたが、すぐに気を取り直し、小さな顔に決意の色を浮かべて言った。「わかりました。わたし瞬星がこの先もしも青雲門の秘密を漏らしたら、雷に打たれて悲惨な死に方をしますように」
 宋大仁は笑ってうなずき、少年を机の前に坐らせて、まず静坐(せいざ)と瞑想の手ほどきをし、ついで人体の経脈(けいみゃく)と気の流れについて簡単に説明し、最後に〈太極玄清道(たいきょくげんせいどう)〉の第一層を教えた。
〈太極玄清道〉とは青雲門のあらゆる法術の根本で、二千年前に青雲子が例の巻物から学びとり、代々の宗師によって研鑽(けんさん)され、いまや天地の神秘に迫る玄妙な教えとなっている。
 太極玄清道には玉清(ぎょくせい)・上清(じょうせい)・太清(たいせい)の三つの境界があるが、門人たちの多くは生涯かけても玉清境を超えられない。もっとも、玉清境の最上層に達していれば、世間では指折りの達人といえる。
 千人近い門人のうち、玉清境を超えて上清境に達したものは、掌門の道玄真人をはじめ、せいぜい十人あまりにすぎない。しかしそのわずかな人々によって、青雲門は当今最強の門派のひとつに数えられているのだ。そして伝説の最高峰である太清境に達し得たものは、不世出の奇才である青葉祖師(せいようそし)その人のみだという。

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テーマ : 小説    ジャンル : 小説・文学


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